犬の散歩で手首が痛い人へ|理学療法士が教えるリードの持ち方とケア

犬の散歩でリードを持つ手。手首の痛みと負担を考える記事のアイキャッチ

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⚠️ 先に確認してください

犬に急に引っ張られた後や、転倒した後に、手首・指の変形、強い腫れ、しびれ、皮膚の色の変化、手首や指を動かせない、物を持てない、といった症状がある場合は、セルフケアをせず医療機関を受診してください。
見た目が軽い捻挫のように見えても、骨折や靱帯損傷が隠れていることがあります。

犬との散歩中、リードを急に引っ張られて「手首がジンッとした」経験はありませんか。あるいは、抱っこやフードの準備、シャンプーのたびに、手首の同じ場所が重だるく感じる方もいるかもしれません。

肩や腰、膝の悩みに比べて、手首の痛みは見過ごされがちです。でも、リードを持つ・抱き上げる・ブラッシングするなど、犬との生活は手首を使う場面がとても多い生活でもあります。この記事では、理学療法士として、犬の散歩やお世話で手首に負担がかかる場面を整理し、リードの持ち方の工夫や、無理のない範囲でのセルフケアを紹介します。

📋 この記事で紹介する内容は、次の4つです。

  1. 急な痛み・腫れ・しびれがあるときの受診目安
  2. 手首の負担を「急な外傷」と「繰り返す負担」に分けて考える整理の仕方
  3. リードを指や手首に巻き付けず、手のひらで持つコツ
  4. 抱っこ・フード準備・シャンプーなど、お世話の動作の見直し方
  5. 軽い症状のときにできる、負担調整とセルフケア

この記事を書いた人
理学療法士歴15年。整形外科クリニックでの臨床経験をもとに、わんこ(トイプードルの「のあ」)との暮らしの中で感じるからだの負担について発信しています。この記事は診断や治療を目的としたものではなく、日常生活での負担を考えるための一般的な情報です。強い痛みや心配な症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。

なぜ散歩・お世話で手首に負担がかかるのか

手首の痛みの原因はひとつではありません。関節の炎症、神経の圧迫、骨折、靱帯の損傷など、さまざまな可能性があります。この記事では、犬との生活の中で手首に負担がかかる場面を、便宜的に「急な外傷・転倒による負担」と「握る・ひねる動作が続く負担」の2つに整理して解説します。実際には、急に引っ張られた後にかばいながら使い続けるなど、両方が重なるケースもあります。

のあ
のあ

リードを引っ張っちゃうと、手首に悪いの?

ぷっく
ぷっく

急に引っ張られたときの1回だけじゃなくて、毎日のリードの持ち方も積み重なっているみたいだよ。

急な外傷・転倒による負担

犬の散歩中のケガについては、近年まとまった研究がいくつも報告されています。共通しているのは、けがの多くが「リードに引っ張られたこと」をきっかけにしている点です。

調査 分かったこと
系統的レビュー
(散歩関連負傷者491,373人)※1
手・手首の骨折や軟部組織損傷が110,722件。68.5%はリードに引っ張られたことが直接の原因
米国救急部門データ※2 年間の受診者数が2001年から2020年で4倍以上に増加。55%は引っ張られたりつまずいたりして転倒
手外科受診者443人の分析※3 約4人に3人がリードに引っかかって受傷。約2割が手術に至った

散歩関連の負傷者は女性が多く、65歳以上の割合も高いことが報告されています※1。いずれも受診した患者の中での割合であり、犬の散歩をするすべての人がこの確率でけがをするという意味ではありません。

握る・ひねる動作が続く負担

もうひとつは、握る・ひねるといった動作を繰り返すことによる負担です。犬との生活では、リードを長時間握り続ける、抱き上げる、フードの缶や袋を開ける、ブラッシングするなど、手首や指を使う場面が多くあります。

関連が指摘される状態 特徴・関連する動作
手根管症候群 手首の神経が圧迫され、指のしびれや感覚の低下が起こる病気。職業性の研究では、強い力で握る動作や力を伴う反復作業との関連が報告されています※4
ドケルバン腱鞘炎 手首の親指側の腱がこすれて炎症を起こす状態。繰り返しつかむ・持ち上げる動作との関連が指摘されています※5
TFCC損傷 手首の小指側にある組織の損傷。前腕をひねる動作の繰り返しなどが関係するとされ、小指側の痛み・握力低下・クリック感が特徴です※6

これらの研究は、いずれも犬のお世話を直接調べたものではありません。手根管症候群の研究は単純な反復回数や手首の姿勢だけでは明確な関連を認めておらず、ドケルバン腱鞘炎の研究は乳幼児の養育者を対象にしたものです。抱き上げや繰り返しつかむ動作の負担を考えるうえでの参考情報としてご覧ください。

整理の仕方 主な場面 特徴
急な外傷・転倒による負担 リードに急に引っ張られる、つまずいて転倒する 突然の痛み・腫れ。骨折や靱帯損傷が隠れていることがある
握る・ひねる動作が続く負担 長時間リードを握る、抱き上げる、フード準備、ブラッシング じわじわとした痛み・だるさ。特定の動作で悪化しやすい

こんな症状があるときは医療機関へ

次のような症状がある場合は、セルフケアで様子を見ず、早めに医療機関を受診してください。見た目が軽い捻挫に見えても、手首の舟状骨骨折や靱帯損傷が隠れていることがあります※7。

手首や指の変形
強い腫れや、急速に広がる腫れ
手や指の皮膚の色の変化
手や指のしびれ、感覚が鈍い
手首や指を動かせない、手をついて身体を支えられない・物を持てない
受傷時に「ポキッ」「ブチッ」といった音がした
赤く腫れて熱をもち、発熱や体調不良を伴う
転倒や急な引っ張りの後、数日たっても痛みが引かない

強い痛みだけを受診の目安にしないことが大切です。骨折は、受傷直後は軽い捻挫のように感じられる場合もあります※7。

手首への負担を考えたリードの持ち方・散歩の工夫

ここでは、手や手首への負担を考えるうえで確認したい、リードの持ち方と選び方を紹介します。

のあ
のあ

リードって、どう持つのが正解なの?

ぷっく
ぷっく

「しっかり握る」と「巻き付ける」は別ものなんだ。そこを分けて考えるのが大事だよ。

指や手首に巻かず、手のひらで握る

「手のひらで持つ」とは、リードを指先で軽くつまむことではありません。輪の大きさが変わらない固定式の持ち手なら、親指だけを軽く通し、残りの輪を手のひらで握る方法があります。親指だけで支えたり、親指や手首に何重にも巻き付けたりせず、引っ張る力が強い場合は反対の手でリードの長さを調整しましょう。犬のトレーニング資料でも紹介されている持ち方です※9。

リードの持ち方の比較。親指を輪に通して手のひらで握る良い例と、指に巻き付ける・手首に通す悪い例
左:親指だけを輪に通し、残りを手のひらで握る持ち方。引っ張る力が強いときは、反対の手でリードの長さを調整します。右上:指に何重にも巻き付けるのはNG。右下:手首まで輪に通すのもNG。

※親指にリードを巻き付けたり、手首まで輪に入れて固定したりする方法ではありません。

手・手首の系統的レビューが提案しているのは、リードを指や手首に巻き付けず、手のひらで持つという原則です※1。親指を固定式の輪に通す方法そのものについて、けがや脱走を減らす効果を比較した研究ではありません。また、けがを避けるために意図的にリードを手放すことを勧めるものでもありません。

脱走が心配な場合は持ち方だけに頼らず、ハーネスが後ずさりで抜けないか、リードや金具に傷みがないかも確認し、道路や人の多い場所ではリードを短めに管理しましょう。

巻き取り式の伸縮リードは急な張力に注意する

巻き取り式の伸縮リードは、犬が急に走って可動範囲の端に達したとき、張力が急に高まることがあります。手・手首の系統的レビューでは、こうした急な張力を避ける観点から、巻き取り式リードを避けることが予防策のひとつとして提案されています※1。ただし、リード形式ごとの負傷率を比較した研究ではありません。急な飛び出しが心配な犬や、人・車の多い場所では、長さが一定のリードも選択肢です。

持ち手の太さ・硬さ・滑りにくさは商品によって異なります。手の大きさに合い、無理なく確実に保持できるものを選び、メーカーが示す対象体重や使用条件、金具の仕様も確認しておきましょう。引っ張る力が強い犬の場合は、持ち手にクッション性のあるタイプもあります。

ハンズフリーリードは転倒リスクにも注意する

腰や肩に装着し、手で持たずに使うタイプのハンズフリーリードもあります。ただし、犬が急に引っ張ると、その力が装着部位に伝わるため、転倒リスクがなくなるわけではありません。引っ張る力が強い犬や、バランスに不安がある方は、使用を控えることも含めて慎重に検討しましょう。既存のレビューでも、負傷時に使われていたリードの種類に関する情報が不足しており、リード形式ごとの安全性は十分に評価できていません※10。

抱っこ・フード準備・シャンプーなど、お世話の動作を見直す

手首に負担がかかるのは、散歩中だけではありません。犬との毎日の暮らしの中には、手首を使う場面が数多くあります。

場面 手首の使い方・工夫
抱き上げる 手首だけでなく、体全体・脚を使って持ち上げると、手首への負担を分散しやすくなります
フードの準備 缶切りや袋を開ける動作は手首をひねりやすいため、専用の器具を使うのもひとつの方法です
ブラッシング・シャンプー 同じ姿勢を長く続けやすいため、途中で手首を休ませる時間をつくると負担を感じにくくなります
爪切り・お手入れ 細かい力を入れる作業が続くため、手首を反らせたままの姿勢を長く取らないよう意識してみてください

抱っこの詳しい持ち方や、腰への負担を減らすコツについては、こちらの記事もあわせてご覧ください。

犬の抱っこで腰が痛い人へ|理学療法士が教える腰にやさしい抱き上げ方とセルフケア

のあ
のあ

散歩だけじゃなくて、お世話全部で手首を使ってるんだね。

ぷっく
ぷっく

1回ずつは小さな負担でも、毎日続くと手首に出てくることがあるんだよ。

痛みが軽いときにできる負担調整とセルフケア

ここで紹介するのは、手首の病気を治す方法ではなく、日常生活の中で負担を調整するための一般的な工夫です。次のような場合は、セルフケアを行わず医療機関に相談してください。

  • 急に引っ張られた後、転倒した後の痛み
  • 強い腫れ・しびれ・変形がある
  • 動かすたびに痛みが強くなる、または悪化していく

手・手首の腱の痛みに対する運動療法については、現時点でまとまった研究がまだ少なく、運動単独の効果を明確に示すエビデンスは限られています※8。そのため、ここで紹介するのは「腱鞘炎を改善する運動」ではなく、「痛みのない範囲で手首を動かす一例」としての位置づけです。

負担を減らす基本の工夫

  • 痛みを誘発する動作を一時的に減らす
  • リードは指や手首に巻き付けない
  • 強い握り込みを避け、時々力を抜く
  • 痛みが増えない範囲で、ゆっくり手首を動かす
  • 痛み・しびれ・腫れが増えたら、すぐに中止する

手首を痛みのない範囲でゆっくり動かす

骨折や靱帯損傷などが疑われる症状がなく、軽いこわばりがある場合は、手首を痛みのない範囲でゆっくり動かす方法があります。

前腕を机などで支え、反対の手で押し込まず、自分の力で手首をゆっくり曲げ伸ばしします。強く伸ばしたり、反動をつけたりする必要はありません。少ない回数から始め、痛み・しびれ・腫れが増える場合や、運動後も症状が残る場合は中止してください。

手首の痛みにはさまざまな原因があるため、この運動ですべての症状が軽くなるわけではありません。数週間たっても変わらない場合は、自己判断で続けずに一度みてもらいましょう。

手首を痛みのない範囲で動かす方法。前腕をテーブルで支え、反対の手で押さずに手首をゆっくり上下に動かす3ステップ

手首を一時的に固定したい場面では、サポーターを使う方もいます。ただし、痛みの原因によって適した形や固定の強さは異なります。また、装着すると握りにくさやリード操作のしづらさを感じることもあります。急に引っ張られた後の痛みや、腫れ・しびれがある場合は、サポーターで様子を見ずに医療機関を受診してください。

BODYPIXEL 手首サポーター(BP-J-1000)

1,540円(片手用)/左右セットもあり

サイズ 幅70mm×長さ470mm×厚さ1mm・22g
素材 ポリエステル88%・ポリウレタン12%
調整 マジックテープで無段階調整

※メーカーの表示によると、本製品は医療機器ではありません。仕様・価格は変更される場合があります。詳細は販売ページでご確認ください。

公式サイトで見る

PTコラム|「手首だけ」ケアしても繰り返しやすい理由

手首の痛みは、手首だけの問題として片づけられないことがあります。リードを握るとき、肩がすくんだまま腕全体に力が入っていたり、抱き上げるときに手首だけで支えようとして、体幹や脚の力をうまく使えていなかったりするケースは少なくありません。

握る力を入れる場面では、手首だけでなく肩や体幹も含めた全身の使い方が影響します。手首のセルフケアだけを続けても、握り方や持ち上げ方の癖そのものが変わらなければ、負担が繰り返しかかりやすい状態は残ってしまいます。リードの持ち方を見直すこと、抱き上げるときに脚を使うことは、その場しのぎの対処ではなく、負担のかかり方そのものを変えるという意味で重要です。

のあ
のあ

手首だけ気をつけてても、だめなの?

ぷっく
ぷっく

手首は一番端っこだから、肩や体の使い方のしわ寄せが集まりやすいんだ。

それでも症状が繰り返す場合や、日常生活で困る場面が多い場合は、自己判断だけで様子を見続けず、整形外科や理学療法士による評価を受けることをおすすめします。

まとめ|手首の負担は、握り方と動作の見直しから

場面 ポイント
急な外傷・転倒 変形・強い腫れ・しびれがあれば、迷わず受診を
リードの持ち方 指や手首に巻き付けず、手のひらで持つ
日々のお世話 抱っこ・フード準備・シャンプーも手首を使う場面と意識する
痛みが軽いとき 痛みのない範囲でゆっくり動かし、増えるようならすぐ中止する
のあ
のあ

まとめると、何に気をつければいいの?

ぷっく
ぷっく

リードの持ち方を見直すことと、痛いサインを我慢しないこと。それだけで、僕たちとのお散歩も、もっと楽しめると思うよ。

参考文献
  1. Dog walking-related injuries of the hand and wrist: a systematic review. Injury Prevention. 2026. PubMed
  2. Maxson R, et al. Epidemiology of Dog Walking-Related Injuries Among Adults Presenting to U.S. Emergency Departments, 2001-2020. Medicine & Science in Sports & Exercise. 2023. PubMed
  3. Plusch K, et al. Hand and Wrist Dog-Leash Injuries in the Outpatient Setting: A Review of 443 Cases. HAND. 2026. PubMed
  4. Harris-Adamson C, et al. Biomechanical risk factors for carpal tunnel syndrome: a pooled study of 2474 workers. Occupational and Environmental Medicine. 2015. PubMed
  5. De Quervain’s Tenosynovitis in Primary Caregivers. Wisconsin Medical Journal. 2023. PubMed
  6. Ulnar Wrist Pain Revisited: Ultrasound Diagnosis and Guided Injection for Triangular Fibrocartilage Complex Injuries. PMC
  7. NHS. Wrist pain. NHS / AAOS. Wrist Sprains. OrthoInfo
  8. Evidence for exercise therapy in patients with hand and wrist tendinopathy is limited: A systematic review. PubMed
  9. Pasadena Humane. Loose Leash Walking(犬のトレーニング資料。医学研究による負傷予防効果を示したものではなく、犬を管理するうえでの実務的な持ち方の紹介です). Pasadena Humane
  10. Leash-related injuries associated with dog walking: an understudied risk for dog owners? Journal of the American Veterinary Medical Association. 2024. PubMed
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