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わんこを抱っこしたとき、肩に鋭い痛みが走った経験はありませんか? リードを急に引っ張られて「あ、やばい」と感じたことは?
肩が痛くなると「これが五十肩か……」と思いがちですが、原因はさまざまです。まずは自分の肩の状態を知ることが、セルフケアの第一歩です。
⚠️ 夜も眠れないほどの強い痛みがある方は、セルフケアより先に整形外科への受診をおすすめします。この記事は、慢性的な違和感・軽い肩の痛み・動きの悪さ(可動域の制限)がある方向けの内容です。
次のフローチャートでご自身の状態を簡単に把握してみてください。整形外科への受診の目安としてもご活用ください。

📋 この記事で整理する肩の痛みへの取り組み方は、次の3つです。
- 肩の痛みの背景を知る(どんな状態に当たるか)
- わんこのお世話で肩に負担がかかる動きを把握する
- 胸椎・肩甲骨から整えるセルフケアを習慣にする
「肩を動かさないようにしよう」ではなく、「どう動かすか」に発想を切り替えることで、わんこのお世話を続けながら肩とうまく付き合えるようになります。
私自身も、旅行でわんこを長時間抱っこした翌日、右肩に違和感を覚えた経験があります。理学療法士として肩の痛みを持つ患者さんのリハビリに携わってきた知識と、実際に自分でケアを続けた経験をもとに、この記事をまとめています。
「肩が痛い」と一言で言っても、その原因はひとつではありません。理学療法士の視点から、わんこと暮らす方に向けて、肩の痛みとうまく付き合うための方法をお伝えします。
肩の痛み=全部「五十肩」ではありません

肩が痛い=全部五十肩じゃないの?

そう思われやすいけど、原因はいくつかあって、どれも共通してできるセルフケアがあるんだ。まず自分の肩の状態を知ることが大事だよ。
肩関節は、体の中でもっとも大きく動く関節です。その一方で、「可動性と引き換えに安定性を犠牲にした構造」とも言われます。多くの筋肉が複雑に連携して動きを補っているため、どこかのバランスが崩れると痛みに繋がりやすい——それが肩の特徴です。
💡 病院でこんな言葉を言われた方へ
「肩関節周囲炎」「腱板炎」「肩峰下滑液包炎」「石灰沈着性腱板炎」——これらはすべて、肩の周りの組織に起きる痛みや炎症の総称である「肩関節周囲炎」の中に含まれる状態です。「五十肩」もその一つで、正式には「疼痛性関節制動症」(肩関節が痛みとともに固まる状態の医学的な呼び方です)と呼ばれます。
「五十肩」「肩関節周囲炎」「腱板炎」など、診断名は病院によって異なることがありますが、痛みを和らげるために大切なのは、今の炎症の状態・痛みの強さ・動きの状態を把握することです。この記事では、その状態に合わせた向き合い方を整理しています。
五十肩・凍結肩とは?

五十肩って、どんな状態なの?

痛みだけじゃなくて、肩が全方向に硬くなる。「他の人に動かしてもらっても硬い」のが特徴だよ。
一般的に「五十肩」と呼ばれる症状は、海外文献では「frozen shoulder(凍結肩)」や「adhesive capsulitis(癒着性関節包炎)」と表現されることがあります。
主な特徴
| 症状 | ポイント |
|---|---|
| 肩の痛み | 特に動かしたとき・夜間に出やすい |
| 可動域の制限 | 全方向に動かしにくくなる |
| 他動でも硬い | 他の人に動かしてもらっても変わらない(他動でも制限あり) |
| 外旋の制限 | 腕を外に向ける動きが特に出やすい |
| 症状の長さ | 数か月〜年単位で続くことがある |
「五十肩は自然に治る」と言われることもありますが、複数年にわたって可動域の制限が残りやすいという報告もあります。「待てば治る」と油断せず、早めにセルフケアや専門家への相談を検討することが大切です。
五十肩になりやすい人
五十肩は、40〜65歳前後の女性に多いとされています。ただし、以下に当てはまる方は発症しやすい・長引きやすい傾向があるため、早めに専門家に相談することをおすすめします。
| 糖尿病のある方 | 凍結肩のリスクが高くなりやすいとするメタ解析があります |
| 甲状腺疾患のある方 | 発症・長期化に関連するとされています |
| 長期固定後 | 骨折・手術などで肩を長期間動かさなかった後 |
肩に負担がかかりやすい「わんこ動作」とその理由
ここで紹介する動作の原則は、わんこのお世話に限らず、日常の荷物を持つ・物を抱え上げるなどの動作にも共通して当てはまります。
姿勢の悪さも、肩には同じ負担になる

姿勢が悪いだけで、肩って痛くなるの?

猫背や巻き肩が続くと、肩の骨と筋肉のすき間が狭くなるんだ。重いものを持ってなくても、それだけで負担がかかり続けるよ。
抱っこで前かがみになると肩に負担がかかる理由をお伝えしましたが、「日頃の姿勢が悪い」というのも、肩にとっては同じことをしている状態です。
猫背や巻き肩の姿勢では、胸椎(背骨の胸の部分)が前に丸まり、肩甲骨が外側・前方に流れた位置で固まりやすくなります。この状態が続くと、肩峰(肩の骨の出っ張り)と腱板(肩まわりの筋肉の束)の間のスペースが慢性的に狭くなります。

🔍 PT目線|「物を持っていないのに肩が痛い」は姿勢のサインかもしれない
肩峰下のスペースが常に狭い状態では、腕を少し持ち上げるだけでも組織が挟まれやすくなります。重いものを持たなくても、座っているだけで肩に負荷がかかり続けているイメージです。
さらに、わんこと暮らす方はデスクワーク・スマホ・長時間の運転などで姿勢が崩れたまま、その上にわんこのお世話(抱っこ・シャンプー・ごはん)が重なります。肩への負荷は、日々少しずつ積み重なっていきます。
だからこそ、後半のストレッチ・筋トレも「姿勢を整える方向」を意識して取り組むと、効果が出やすくなります。
💡 一言でいうと
猫背や巻き肩が続くと、肩の中のスペースが狭くなりやすくなります。だからこそ、肩だけを揉むのではなく、背中と肩甲骨を動かせるようにすることが大切です。

わんこのお世話って、肩に結構負担かかってるの?

意外とかかってる。しかも毎日繰り返すから、気づいたら蓄積してるんだよ。
「ペットのお世話と肩の痛み」を直接つなぐ研究はまだ多くありませんが、犬の散歩・リードの引っ張りによる上肢の外傷は報告されており、肩の捻挫・筋損傷が代表的な損傷のひとつとして挙げられています。また、毎日繰り返す抱っこ・前かがみ姿勢は、胸椎の柔軟性低下や肩甲骨の動きの悪さにつながりやすい動作です。
抱っこ・物を持つ動作
腕だけで持ち上げようとすると、肩前面(上腕二頭筋腱・腱板前方部)に負担がかかりやすくなります。また、抱っこ中に胸椎が丸まった姿勢(猫背)になると、肩甲骨が前に傾き、肩峰下のスペースが狭くなりやすい状態になります。

📌 コツ:わんこを体に引き寄せてから持ち上げる。腕を伸ばしたまま持ち上げると肩への負担が増しやすくなります。
リードの急な引っ張り
散歩中に急に引っ張られると、瞬間的に大きな牽引力が肩・上腕にかかります。片手でリードを持ち続ける姿勢も、肩の後方にある外旋筋(棘下筋・小円筋)に継続的な負担をかけやすい状態です。犬の引っ張り・転倒・リードの絡まりによる上肢の損傷は研究でも報告されています。

📌 コツ:リードは短めに持ち、犬をできるだけ体の近くに置く。急に引っ張られても腕を伸ばしきらず、肘を少し曲げた状態をキープすることで肩への衝撃を吸収しやすくなります。
あなたの肩、どこが痛いですか?
ひと言で「肩が痛い」といっても、痛む場所によって関与している組織が変わります。まず自分の痛みの場所を確認してみましょう。
前面・上面が痛い(抱っこや腕を上げたとき)
上腕二頭筋腱・棘上筋など、肩の前面〜上面にある腱板が関与しやすい部位です。抱っこや腕を前に出す動作で負担がかかりやすくなります。

どこが痛いかって、関係あるの?

五十肩と腱板の痛みは場所が違うから、どこが痛いかで対策も変わるんだよ。

後面が痛い(リード保持や腕を外に回すとき)
棘下筋・小円筋など、肩の後面にある外旋筋が関与しやすい部位です。リードを持ち続ける姿勢や、腕を外に回す動きで負担がかかりやすくなります。

肩を守るためのストレッチ・筋トレ

肩のために、どんなことをすればいいの?

肩だけじゃなくて、背中(胸椎)と肩甲骨から整えるのがポイント。そこを動かすと、肩への負担がかなり変わるよ。
肩の痛みのセルフケアで大切なのは、「肩だけを見ない」ことです。抱っこ・リード・前かがみが続くわんこ生活では、胸椎(背骨の胸の部分)が硬くなり、肩甲骨が前に傾きやすくなります。その結果、肩峰下のスペースが狭くなり、腱板に負担がかかりやすい状態になります。これはわんこのお世話に限らず、デスクワークや長時間のスマホ使用など、前かがみ姿勢が続く日常生活全般に共通することです。
以下の4つは、胸椎・肩甲骨・外旋筋という「肩の土台」から整えるセルフケアです。
胸椎の柔軟性を高めるストレッチ
前かがみや抱っこの姿勢が続くと、胸椎は屈曲方向(前に丸まった状態)に偏りやすくなります。ポールやバスタオルを使って胸椎を後ろに伸ばす「伸展」の動きを取り戻すことで、丸まった姿勢を改善し、肩が動かしやすい状態に整えます。

フォームローラーは、背中や肩まわりをゆるめるセルフケア器具として活用しやすいツールです。肩甲骨まわりや胸椎の可動性が気になる方のケアを補助する道具として参考にしてください。
ハーフカットタイプは丸型よりも安定感があり、床に置いたまま使いやすいのが特徴です。乗り降りが楽なため、運動に慣れていない方や体幹トレーニングの補助具として始めやすい選択肢のひとつです。
道具は必須ではありません。まずはバスタオルなど、家にあるもので試してみても大丈夫です。そのうえで、背中や肩甲骨まわりをより安定して動かしたい方は、フォームローラーやストレッチポールを補助的に使うのも選択肢のひとつです。

ストレッチポールは、胸椎の柔軟性や肩甲骨の動きを補助的に高めるツールです。治療器具ではありませんが、姿勢の改善や肩まわりのセルフケアを補助する道具として活用しやすい選択肢のひとつです。
肩甲骨運動
下部僧帽筋・前鋸筋の活動が低下すると、腕を上げたときに肩甲骨が正しく動かず、肩峰下で腱板が挟まれやすくなります。肩甲骨を「下に引き下げながら寄せる」意識が大切です。

インナーマッスルを鍛える外旋トレーニング
外旋筋(棘下筋・小円筋)は腱板を構成する筋肉のひとつで、五十肩・腱板関連痛どちらにも関与しやすい部位です。

ただし、動かすと強い痛みがある急性期には、無理に動かさず安静を優先してください。痛みが落ち着いてきた段階から少しずつ始めることが大切です。
ストレッチが痛くて動かせないときの補助ケア
夜はぐっすり眠れるけれど、ストレッチをしようとすると痛くて動かせない——そういった段階の方に向いているのが、マッサージガンです。肩の痛みを直接治すものではありませんが、筋肉の緊張を緩めてストレッチや肩甲骨運動を続けやすくするために取り入れるのも選択肢のひとつです。私自身も仕事後の疲れた肩まわりに使っています。スポーツ現場でも取り入れられることが多く、使い方次第で日常のセルフケアに組み込みやすい道具です。

肩まわりを伸ばしても変わりにくい方は、ストレッチが効きやすい人・効きにくい人の違いも参考になります。
📖 こんな方は、一度読んでみてください
- ✅ ストレッチをしているのに、肩のつらさが戻ってくる
- ✅ 肩甲骨や背中まわりが、自分ではうまく動かせている気がしない
- ✅ ストレッチや姿勢を意識しているのに、また肩が痛くなる
体の使い方のクセは、自分ではわかりにくい部分が多いものです。気になる方は、専門家に一度動きを見てもらう機会を作ってみてください。
▶ ヨガ・ピラティスの違いと選び方を見るまとめ|「肩を動かさない」より、”動かし方”が大切

まとめると、肩が痛いときはどうすればいいの?

肩だけを見ない。胸椎と肩甲骨を動かして、外旋筋を鍛える。抱っこのときにのあを体に引き寄せる——それだけで、毎日のお世話がずっとラクになるよ。
肩が痛くなると「動かさないようにしよう」と思いがちです。でも、大切なのは「肩を使わない」ことより、「肩に負担のかかりにくい動かし方を知る」ことです。
| 📍 動作を見直す | 💪 ケアを習慣に | 🏥 受診の目安 |
|---|---|---|
| 抱っこ・リード・ドライヤーなど、負担がかかりやすい動作を意識して調整する | 胸椎ストレッチ・肩甲骨運動・外旋トレーニングを続ける | 強い痛みや神経症状があるときは、迷わず整形外科へ |
わんこのお世話も散歩も、肩とうまく付き合いながら長く続けていきましょう。
運転中の首・肩のこりが気になる方は、こちらの首痛対策記事も合わせて参考にしてみてください。長距離ドライブ後の腰のケアは、こちらの腰痛対策記事をどうぞ。

